「ノア……わたしのこと茶化してるんだよね?」
「茶化してない。本当のことなんだ。タマちゃんだって、最初に言っただろ。昔飼ってた犬に俺がそっくりだって」
そうだ。たしかにわたしは言った。
まんまるの黒い瞳も、好奇心旺盛で今すぐ飛び出していきそうな雰囲気も、なつかしいあの子にそっくりだと思ったから。
「でもっ」
騒がしい心臓のあたりを手で押さえ、わたしは彼に食い下がる。
「あのとき、ノアは否定してたじゃない。犬に似てるなんて失礼だって」
「否定はしてないよ。いきなり当てられて驚いたのは事実だけど。それに、失礼って言ったのはそんな意味じゃない。俺のことを死んだってタマちゃんが言うから、失礼だなって言ったんだよ」
さらりと彼が口にした「俺のこと」というセリフに、めまいがする。わたしは倒れないように足を踏ん張り、あのときの会話を思い出した。
――『で、何。俺がその死んだ犬に似てるって?』
――『うん、似てる。あの子が生き返ったみたい』
――『ひどい言われようだな……』