「えーっ、嘘だろ!?」
突然、子どもの声が山道の下の方から響いた。
よく通るその声に驚き、わたしはノアから体を離してそっちの方を向いた。
「それがまじらしいぜ。サトシがトモから直接聞いたって、さっき言ってたもん」
このあたりを子どもが歩いていることはたまにあるので、普段なら気にすることはない。
けれど、会話から少年たちがトモくんの友達だとわかり、とっさに耳が反応した。ノアも真剣な表情で、声の方向を向いている。
「トモのやつ、そんな変なこと言ってたのかよ」
……変なこと?
そういえば、実里さんもさっき、そんなことを言っていたっけ。
「信じらんねえなあ。どうせトモ、遭難してパニックになってただけだろ」
「やっぱそうかな」
「だってさ、そんなのありえねえだろ」
びゅうっ、と空気を切るような風が、そのとき吹いた。
「遭難したトモのことを、――が見つけてくれたなんて」
え……? 今、なんて言ったの?