「うん。でももう、じゅうぶんもらったから」
「たったの数日間じゃない」
無意識に口調が強くなる。すがりつくようなわたしとは真逆に、ノアは穏やかな表情で首を横に振った。
「ううん、ちがうんだ。タマちゃん」
「ちがう、って……」
「俺はもう、思い出いっぱいもらってるんだよ」
え?
わけがわからず、ノアの顔を凝視する。こんなにも至近距離で向き合っているのに、なぜか急に彼が遠く見えた。
「ノア……なに言ってるの?」
つかめない虹を見ているようで、胸に不安がこみ上げる。
寂しさとも、あきらめとも、慈しみともとれる不思議な色を浮かべるノアの瞳。
「……ずっと、タマちゃんを見てた。そばにいなくても、俺の心の中にはいつもタマちゃんがいたんだ」
「ノ、ア……?」