もし病院に行ったならの隣町だ。バスはまだあるだろうか。わからないけど、とりあえず行こうと思った、そのとき。
「ノアっ!」
前方に探していた姿を見つけ、わたしは安堵の混じった声で叫んだ。
「あ、タマちゃん」
のん気な口調で答えながら、ノアがゆっくり歩いてくる。
「どこに行ってたの!?」
「ごめん。ちょっと、散歩にね」
「……は?」
予想外のお気楽な発言に、わたしは拍子抜けして膝から崩れそうになった。
う、嘘でしょ。人がこんなに心配したのに、散歩って、散歩って……。
「ばか!」
ノアのコートのすそを、両手で乱暴につかむ。
「心臓止まるかと思ったじゃん、ノアのばか!」
「ごめん」
「でも、よかった……!」
声を震わせたわたしの体を、ノアがやさしく引き寄せた。