きっとわたしのお母さんも、親が事故で死んでしまったとき後悔したはずだ。たとえ叱られてでも、向き合えばよかったって。

そして、そんな後悔をしないために何かができるのは、今生きている人間だけなんだ。


そのあと、宿泊費の清算をすませたわたしは、二階の部屋で荷物をまとめた。

持ち物は衣類とわずかな小物くらいなので、準備はあっという間にすんだ。

階段をおりると、一階の廊下に実里さん、そして旦那さんとトモくんもそろって待ってくれていた。


「本当に、お世話になりました」


旦那さんに深々と頭をさげる。「うん」と頭上から返ってくる声は、心なしかしんみりしていた。

わたしはその体勢のまま、旦那さんの横のトモくんに視線を移した。


「タマちゃん……行っちゃうんだ」


怒ったような、すねたような、複雑な表情で見上げてくるトモくん。

ひとりっ子のわたしにとって、この数日間は弟ができたみたいで嬉しかった。