実里さんに視線を戻すと、彼女はトモくんたちの声がする部屋の方を向きながら、肩をすくめていた。
「またあいつ、変なこと言ってる」
「え?」
変なことって? そう尋ねようとしたと矢先に、キッチンからタイマーの音が鳴った。
「あっ、焼けたかな」
実里さんがオーブンの方へ小走りして行ったので、会話はそこで中断した。
ほどなくして、香ばしいチキンの香りがあたりに広がった。
天板ごとオーブンから取り出した実里さんが、「見て、いい焼き具合」とわたしに向けて言う。チキンは骨付きの大きなもので、そういえば今日はクリスマスだったな、と思い出した。
「今夜はごちそう、いっぱい作るよ。タマちゃん、苦手なものはない?」
うきうきした様子の彼女に、わたしは意を決して話を切り出す。
「すみません……その前にお話が」
「え?」
「チェックアウト、お願いしていいですか」