「やっぱり、病院に……」


言ったそばから、ノアが「やめてくれ」と言いたげな目でわたしを見た。意識は朦朧としているはずなのに頑なに病院を拒む様子は、執念すらも感じさせた。


「どうして……ノア……」


そんなこと言わないでよ。お願いだよ。お医者さんに診てもらって早く良くなろうよ。

……ノアが笑っててくれなきゃ、わたしは笑えない。

いつの間にか君の存在は、わたしの中でこんなに大きくなっていたんだ。


   ***


そのあとも幾度となく「病院に行こう」「行かない」の押し問答をくり返し、時間だけが過ぎていった。
ただ寄り添うことしかできない、無力な自分がはがゆかった。

外でカラスが鳴いている。

もう夕方だ。そろそろ民宿に戻らないと、実里さんたちが心配しているかもしれない。

ベッドの傍らに座ったわたしは、ノアの様子を確認した。

さっきより少しは落ち着いた呼吸。どうやら眠っているらしい。