「でも、ノア……」

「一生の……お願い」


どうしよう。どうすればいいんだろう。

判断しかねて勝也さんを見ると、彼は神妙な顔つきでうなずく。ノアの意思を尊重してやれ、と言うかのように。

わたしは泣きそうになるのをこらえ、ベッドの横に力なく座った。


「ありがとう……タマちゃん」


ノアが安心したようにつぶやいた。


   ***


一点の曇りもない完璧な青だ。
窓から見える空は、昨夜の嵐が嘘のように晴れ渡っていた。

だけど、視線を落とせば傷ついて横たわるノアがいる。

あっけらかんと回復した天気のように、ノアもそうなってほしいと願ったけれど、むしろ悪化しているように思えてしかたない。

痛ましい彼を見るたびに、わたしの胸も痛んだ。


「何か食べた方がいいんじゃないか?」


背後から勝也さんが放った言葉は、わたしに向けたものだろう。時計を見ると、とっくにお昼を過ぎている。

「いいんです。何も食べられそうにないから」