たいしたことない? そんなわけないじゃない。これほどまで真っ青な顔をしているのに……。

苦痛にゆがんだノアの表情は、今まで見たことのないものだった。

わたしがベッドのすぐそばに寄ると、ノアが瞳だけでこちらを向いた。必死に笑みを作ろうとする表情が痛々しい。


「早く病院行かなきゃ……あっ、まだ開いてないんだ」


直接行って先生を呼んでこよう。そう思って踵を返そうとしたわたしは、けれどノアが発した声で動きを止めた。


「タマちゃん……いいから」

「いいから、って……」


何を言ってるの? 今は強がってる場合じゃないでしょう?


「お医者さん、呼ばないで……。頼むよ」


それは強がりではなく、懇願だった。どうしてそんなことを言うのか、わたしにはまったく理解できない。だけど。


「お願いだから……」


あまりに切実なノアに圧倒され、わたしは振り切ることができなくなってしまった。