遠くの山が黄金色に光り、朝日が完全に顔を出す。
わたしがこの町に来て五日目の朝。
悪夢のような一夜は、無事に明けたんだ。
そのときふいに、ノアがいないことに気がついた。実里さんたちに気をとられている間に、黙って帰ってしまったんだろうか。
「すみません。ちょっと出かけてきます」
旦那さんに一言告げてから、わたしは勝也さんの家へと歩き出した。
***
山道に入ると、夜中の嵐の名残がくっきりと残っていた。折れた木の枝がそこらじゅうに散乱し、なぎ倒された木もある。
ぬかるんだ道ですべらないよう、足元に注意しながら歩いていたわたしは、ふと眉をひそめた。
……地面にしみこんだ、小さな赤いシミ。
一定の間隔で点在するそれは、山の上の方へと続いている。最初に見つけたものは十円玉くらいのサイズだったのが、徐々に大きくなっていくのがわかった。