ノアは疲れの見える表情で微笑み、トモくんの体をわたしに預けた。
子どもと言えど意識のない人間の体は重い。わたしはトモくんを腕に抱いたまま、体重を支えきれずぺたりと座りこんだ。
眠っているトモくんの様子を、おそるおそる確認する。大きなケガをした形跡はない。寝息も規則正しくて、わたしはホッとした。
「トモ!」
物音に気づいたらしい実里さんと旦那さんが飛び出してきた。
ふたりの目には我が子しか映っていないらしく、わたしを押しのけんばかりの勢いでトモくんに駆け寄る。
何度か名前を呼ばれたトモくんが、呆けた顔でようやく目を開いた。
「……ママ?」
「そう、ママだよっ!」
「俺……帰ってきたの?」
「帰ってきたのよ! ああもうっ! よかった……!」
大泣きする実里さんと、鼻をすする旦那さん、そして状況を把握しきれていない様子のトモくん。
そんな親子の姿を微笑ましく見ながら、わたしは立ち上がった。