ノアがわたしの体をふり向かせ、両肩を強くつかんだ。


「タマちゃん、しっかり」

「どうしようっ……トモくんが……っ!」

「大丈夫だよ、ゆっくり息して」

「どうしようっ……どうしよう、ノア!」

「落ち着いて、タマちゃん。これからもっと天気が荒れる。民宿に戻ろう」


わたしは頭を大きく左右に振った。絶対に無理だ。トモくんが遭難しているかもしれないのに、部屋で待つなんて。


「そんなの、無理っ……」

「大丈夫だから」

「無理だよっ――」

「俺が!」


荒々しい声に、わたしはハッと顔を上げた。


「……俺が、必ずその子を見つける。だからタマちゃんは何も考えずに、俺のことだけ信じて」