「トモがっ……トモがいないの!」
わたしの腕を痛いくらいの力でつかみ、実里さんが叫んだ。普段はあんなに大らかで、笑顔を絶やさない実里さんが。
わたしはごくりと唾を飲む。けれど口内は思いのほか乾いていて、ほとんど空気しか飲みこめなかった。
「いないって、どういうことですか?」
「昼頃、一度帰ってきたんだけど、マナちゃんに会うって言ってまた出かけたの! でも帰って来なくて……マナちゃんちに電話したら、来てないって……!」
説明を聞いた自分の顔が、青ざめるのがわかった。
実里さんはいてもたってもいられない様子で、しきりに視線を動かしている。瞳孔の開いた瞳からは涙があふれてくる。
その涙を吹き飛ばすほどの強風にあおられ、わたしは両足を踏ん張った。
普通に立っているのすら困難な吹雪だ。こんな中でトモくんはひとり、どこに行ってしまったんだろう。