「トモー! どこにいるの、トモー!」
声を発する場所が少し近くなり、こんどはわたしの耳でも聞き取れた。身を引き裂くような絶叫。
トモくんの身に何かが起きたんだ。それだけは明確だった。わたしは床を蹴るように立ち上がった。
「ちょっと行ってくる!」
ノアに断りを入れながら、手はすでにドアノブをつかんでいた。
足先を靴につっこんで外へ出る。横殴りの雪が、わたしの顔面を叩いた。
山道を走って途中まで下ると、吹雪のむこうに実里さんの姿を見つけた。
「トモー! お願い、出てきて! トモー!」
「実里さん!」
「っ……、タマちゃん」
こちらを向いた実里さんの顔に、わたしは思わず息をのんだ。
目が真っ赤に充血し、鼻の頭もそれと同じくらい赤い。いつもきれいに巻いている髪は無残に乱れ、ウールのコートにサンダルという、ちぐはぐな恰好だった。
「どうしたんですか!?」