驚いた。いつも穏やかで怖いものなんてなさそうなノアなのに、まさか雷をこんなに怖がるなんて。
人間誰しも意外な一面を持っているものなんだな。
でも……ちょっとかわいい姿が見られて嬉しいかも。なんて言ったら怒られちゃうかな。
「ノア」
そうやってわたしに抱きついていると、少しは安心するの?
「大丈夫だよ……そばにいるから」
「うん……」
くぐもった小さな声が、お腹のあたりから聞こえる。まるで幼い子どもになったような彼に、胸がきゅうっとすぼんだ。
わたしはそろりと、彼の髪に触れてみた。
少しくせのある、やわらかい髪。かすかな甘い香り。小ぶりな頭のカーブに沿ってなでると、毛の一本一本が指の間を流れていく。
しばらくそうしていると、ノアの震えはおさまっていった。
停電が回復し、ぱっと部屋に明るさが戻ったのは、それから十分ほど経ったころだった。
「ノア?」
動く様子がないので呼びかけると、返ってきたのは穏やかな寝息。