たしかにそうだ。一度ならず二度までも遭難するのはいただけない。

だけど赤い顔をノアに見られるのも気まずくて、わたしは二十メートルほど離れたところまで来ると立ち止まった。

はあーっ、と息を吐き出して、木にもたれかかる。胸に手を押し当てると、コートの上からでも心臓の動きがわかりそうだった。


「……わたしのばか。意気地なし」


さっきノアに触れられたおでこが、まだ熱を放っている。そこに何かひんやりしたものが触れて、見上げると雪がまた降り出していた。

心地よい冷たさを顔に感じながら、わたしは固く目をつむった。


……もし、あのまま伝えていたら、ノアは何て言っただろう。

「これからも会おう」って言ってくれただろうか。
それとも、会いたがるわたしに「なんで?」って思っただろうか。

もしも後者だったら、と考えると怖いんだ。

名前も素性も明かさずに始まった、あやふやなこの関係を、未来へとつなぎたいと思っているのはわたしだけかもしれないから。


――と、そのときだった。