「顔赤いよ、タマちゃん」


ずいっとノアのきれいな顔が近寄る。鼻先が触れそうになって、一瞬、息が止まった。


「大丈夫?」

「あ、あの……っ」


伝えなきゃ。友達や家族から逃げ出してこの町に来たこと。もうすぐ東京に帰らなきゃいけないこと。
そして、これからもノアとつながっていたいことを。

なのに、この近すぎる距離感が、わたしから平静さを奪っていく。


「タマちゃんこそ風邪ひいたんじゃない?」


おでこにノアの手が触れて、思わず肩が跳ねた。顔面が発火しそうなほど熱を持つ。


「やっぱり熱いな」

「いや、あの」

「あ、そういえばさっき、何か言いかけ――」

「なんでもないっ」


わたしは素早く立ち上がり、ダッシュで逃げ出した。突然のわたしの行動に、ノアが素っ頓狂な声を上げる。


「ちょっ、走ったら迷子になるよ!」