彼の心が、亡くなったお兄さんを想って痛んでいる。それがわかって、わたしも痛かった。小さいトゲがたくさん心臓に刺さったみたい。

そしてわたしは、急に自分が恥ずかしくなった。

ノアに比べたら恵まれた環境なのに、今まで不満ばかり持っていた自分が。しかも、それをノアに救ってもらっている自分が。

翼たちのこと、家族のこと。まだ現実に問題が解決したわけじゃないけれど、こうして向き合う時間ができたのはノアに出逢ったからだ。


「……ノア」


わたしは、君のために何かできないのかな。君にとっては、よけいなお世話かもしれないけれど。

ノアからもらった温もりや笑顔、その半分でもお返しができたら嬉しいんだ。

そう、この七日間が終わったあとも、ずっと――。


「ノア、わたし」

「ん?」


鼓動が速くなって、コートの生地をぎゅっと握った。


「わたし、ノアと……」