そうか。わたし、無意識にお母さんと同じセリフを吐いていたんだ。指摘されてバツが悪くなり、体育座りのひざを引き寄せて小さくなる。
「でも、あれはタマちゃんの本心じゃないよね」
「当然だよ」
勢いで言ってしまったけど、断じて本心じゃない。
たしかに、美那子と出逢ったことで辛い想いもしたけれど、出逢いまでなかったことにしたいとは思っていない。今はそう言い切れる。
「じゃあ、さ」
つないだ手をわたしのひざに乗せながら、ノアが言った。
「タマちゃんのお母さんもひょっとして、そうじゃないかな」
「………」
「もちろん、ホントのとこは俺にはわからないけど」
ノアは断言を避けて、やんわりとした口調で告げる。それはつまり、自分自身で考えろということだろう。
わたしはくずれた雪だるまを見下ろした。
どう、なんだろう。お母さんも昨日のわたしみたいに、勢いで言ってしまっただけなのかな。
“本当の気持ち”を、お母さんも――そしてやっぱりわたしも、お互いに見失っていたのかな。