「雄大くんって絶対、いい彼氏になるタイプだと思うよ」
「ちょっと待ってよ、なんでそんな話になるわけ?」
「えー、だって、ねぇ?」
美那子が翼をちらりと見上げて、意味ありげに笑った。
「環にも、幸せになってもらいたいもん」
「―――」
頭にのぼった血が急激に冷えていく。
きっと今、わたしの顔は蒼白だ。けれど幸せなふたりは、そんなことにも気づかないんだろう。
わたしにも幸せになってほしい?
だから雄大くんと仲良くしろって言うの?
最初からそのつもりで雄大くんを誘ったの?
見当違いにもほどがある。
わたしが欲しい幸せは、今、美那子が手にしてる幸せなのに……。
「ほら、雄大戻ってきたぞ」
翼がわたしの背中をポンと叩き、それは胸の奥底までズシリと響いた。
***
バス乗り場へと歩く間、わたしは心ここにあらずだった。
やっぱり、来なければよかった……。頭を占めるのはそんな言葉だけ。
バイトなんて勇気を出して断ればよかったんだ。ふたりの幸せな姿を見なきゃいけない上に、別の男の子をあてがわれ、上から目線で幸せを願われるだなんて吐き気がする。
「もうじき到着だってさ」
バス乗り場で係員の人に教えてもらい、翼が言った。