むきになって雪を投げ続けていると、足元がつるりと滑った。
ああ、まただ。ドジなわたしはまたしても転んでしまう――。
後ろの木に後頭部を思いきり打ちつけた、と思った。けれど、覚悟したはずの痛みは襲ってこなくて、代わりにやわらかいものがわたしの頭を包む。
ぎゅっと閉じていた目を、おそるおそる開けた。
まつ毛に白い粉がついている。目の前には、雪まみれのノアの服。わたしはようやく、この体勢を理解した。
ノアの片腕がわたしの頭を抱きしめるように抱え、もう一方の腕を背後の木について支えていた。
「……っ」
心臓が急速に高鳴り、頭に酸素がまわらなくなる。声を発しようとしても、喉が焼けついたように熱い。体中がドキドキと脈を打った。
「別に、はぐらかしたわけじゃないよ」
そっと体を離しながら、ノアが言った。
「え?」
「俺のこと、タマちゃんに言いたくないとかじゃないから。ただ本当に、俺のことよりタマちゃんの家族のことを、タマちゃんの口から聞いてみたかったんだ」
「……なんで?」
わたしの家族のことなんて、聞いても何もおもしろくないのに。