「俺のことより、タマちゃんのお父さんとお母さんは?」
しかも、はぐらかされた上に質問返しされてしまった。
「……ノアの方から教えてよ」
「タマちゃんの方から教えて」
「やだ」
「だーめ」
地面の雪をひょいをすくったノアが、それを団子にしてわたしへと投げる。反射的にキャッチすると、「ナイス」と彼が笑った。
……なんだよ、それ。わたしは雪合戦がしたいんじゃない、ノアのことを知りたいんだよ。
「ずるい、ノア」
「何が」
「全部。全部ずるい」
「あはは、そっか」
わたしが雪を投げ返すと、手元も見ないで軽々と受け止めるノア。
その余裕しゃくしゃくな態度も、まぶしすぎる笑顔も、はぐらかす態度も。わたしの心をざわつかせるから、ずるいんだ。
なんだか悔しくて、手当たり次第に雪を投げつけた。
集中攻撃を受けたノアは、髪を白く染めて服も雪まみれではしゃいでいる。静寂の森に反響する笑い声。