「ああっ!! タクちゃん、こんなところにいた!!」
「わ……っ、サ、サカキさん!?」
「多分、トキさんのところじゃないかなと思ったのよ! もう本当に探したんだから!!」
「……お母さん?」
ぽつり、と。私が零した言葉に目を見開いたのは雨先輩で、タクちゃんは呆気にとられた表情で、ナース服に身を包んだ私のお母さんを見つめていた。
久しぶりに見る、看護師としてのお母さん。
そんなお母さんは私には目もくれず、興奮しきった様子でタクちゃんの手を強く掴んだ。
「見つかったの! ドナーが!!」
「え……」
「タクちゃんのドナーが見つかったのよ!! それで今、タクちゃんがどこにいるのかって、タクちゃんのご両親と私とで探し回っていて……」
その言葉を最後まで聞くより先に、零れ落ちた涙の雫。
そっと、隣を見てみれば、タクちゃんの目からも大粒の涙が零れ落ちていた。
「……雨先輩」
「……うん?」
……雨先輩。
雨先輩は未来が見えても良いことなんて、ひとつもないと、そう言っていたけれど。
「……良いこと、ひとつ、ありましたね」
そう言って泣きながら笑えば、雨先輩も「そうだな」と、嬉しそうに笑った。
小さな窓から見える空。
そこから差し込む僅かな光は、相変わらず私達の足元を照らしていた。