「やっぱりいらない」
テーブルに箸を放り出して、そっぽを向いてしまった。
「ちゃんと食べてよ。蒼ちゃんの体なんだから」
「知ったことか」
「じゃあ、あんたの存在を周囲に言いふらしてもいいの?」
ホタルが「は!?」とふり返り、こめかみを引きつらせる。
「お前、わかってんのか。そんなことしたら蒼の体を――」
「わかってるから言ってるんだよ。わたしが秘密を守る代わりに、あんたは蒼ちゃんの体を傷つけない、そういう取引でしょ。
だったらちゃんとその体を大事にして。食事を抜くのも禁止です」
ぎりりと歯噛みしつつも、ホタルは半ばヤケクソのようにハンバーグを細かく切り分け始めた。
最初の一切れを口に運ぶときは、ものすごく嫌そうな顔だった。
が、二口目、三口目とスピードが上がっていき、文句も言わずに食べ続けたところを見ると、案外ハンバーグが気に入ったようだ。
「野菜とかお米もちゃんと食べてよ」
「いらない」