わたしは今いるダイニングキッチンと、その横に続くリビングを見回した。
こいつのことだからまともに食べていないだろう。案の定、夕食をとった形跡はない。
しばらく思案した末に、レンジを借りて持参した料理を温めた。
こんなやつに食べさせるのは不本意だけど、蒼ちゃんの体の栄養摂取が優先だから。
「食べて」
どん、と音をたててタッパーごとテーブルに置く。
立ちのぼる湯気を顔面にあびたホタルが、不快そうに椅子の上で身体を引いた。
「何だこれ」
「見ての通りハンバーグだよ」
「……はんばーぐ?」
「知らないの!?」
パス解析する頭脳はあるくせに、ハンバーグを知らないなんてどういうことだ。
「……煙が出てる」
「煙じゃなくて湯気」
「………」
ホタルはフェンシングのような持ち方で箸をかまえると、ハンバーグをつついて様子をうかがい始めた。
完全に不審物扱いだ。そんなに警戒しなくても爆発しないから、それ。