たしか蒼ちゃんはパスワードロックをかけていると、前に話していたことがある。
パスの解析なんてそうそう簡単にできるものじゃないはずだ。
ホタルがこちらに視線を上げた。
眉を寄せて口を歪めたその変な表情は、あからさまにわたしを小バカにしている。
「こんな簡単なこともできないのか? お前の脳みそは」
むっかーーー!
手に持っていたタッパーを思わず投げつけそうになった。
落ち着け、これは蒼ちゃんのために持ってきたものだ。ていうかタッパーを投げたら当たるのは蒼ちゃんの体だ。
ああもう、ややこしい。
それにしてもさっきからわたし、なんで普通にホタルとしゃべっているんだろう。極力関わりたくないはずなのに。
でも、こいつが悪いんだ。ほっとくと何をするかわからないから、仕方なく口を出してしまう。
それに正直、今まではこいつのことを不気味な存在に感じていたけれど、こうして接してみると普通の憎たらしいガキみたいで。怖さは、あまり感じない。