それなら、まあいいんだけど。と勢いをなくした声で、ごにょごにょと付け足すわたし。
ホタルはもうわたしなんて目に入っていないかのように、自分だけの世界でスマホをいじっている。
……病院で会って以来、こうして顔を合わせるのは5日ぶり。
改めて目の前にすると、やっぱり蒼ちゃんとは別人で、ホタルという人格がたしかに存在しているのだと痛感する。
わかってはいたけど不思議な光景だ。
わたしにはまだまだ、多重人格というものが理解できない。
「ん? ちょっと待って」
そこでようやく、ホタルのいじっているスマホに見覚えがあることに気づいた。
「それって蒼ちゃんのスマホじゃん。なんで勝手に使ってんの」
「勝手にじゃない。ロックを解除したから使ってる」
「それが勝手だって言うの。ていうか解除ってあんた、どうやったのよ」