こないだは動揺していたから、こいつの脅しにひるんでしまったけれど。これからはもっと強気で接していかなくては。

蒼ちゃんのためにも、わたしがしっかりしなくちゃ。


「あっ、待ってよ」


けだるい動作で踵を返したホタルが、すたすたとリビングに戻っていく。

玄関に放置されたわたしは、誰もいない空間に向かって「おじゃまします!」と一応断ってから彼の後ろを追った。


「待ってってば」

「何の用だ。さっさと言え」

「あんたじゃなくて蒼ちゃんに用があって来たの」

「だったら出直すんだな」

「じゃなくて! この家に来る人は蒼ちゃんか、蒼ちゃんの家族に用があって来るんだから、さっきみたいにあんたが勝手に出ちゃダメでしょ」


ダイニングの椅子に腰かけたホタルに追いついて、ばんっとテーブルを叩く。
けっこうな音がしたけれど、彼は動じることなく機械的に答えた。


「窓からお前の姿が見えたから開けたんだ。他の人間だったら開けるか」

「あ……そう、なんだ」