彼の話はわたしをさらに混乱させるだけだった。
眠るとか逃げるとか、意味がわからない。
だけどひとつだけ確実にわかるのは、彼の言葉には蒼ちゃんへの蔑みが含まれている、ということだ。
「だから」
と彼は言って、足元に落ちていた木の枝をおもむろに拾い上げた。
「たとえば僕がこれで傷つけても、あいつは抵抗すらできない」
「え……?」
左手がすうっと顔の高さまで移動する。
こめかみに狙いを定め、垂直に構えた木の枝。
その先端が凶器のように尖っているのに気づき、悪寒が走った。
「この体は今、僕の自由だ」
「やめてっ!!」
わたしは悲鳴のように叫んだ。同時に彼に飛びかかり、彼の左腕を必死につかんだ。