感動して思わず見とれていると、花江くんが首をかしげた。
「茅野さん?」
「あっ……ありがとう」
あわててプリントを受け取る。そして床に散らばっている残りの教科書も、ぽいぽいとカバンに放りこんだ。
一通り片付くと、花江くんは「じゃあ」と笑顔で言って友達の輪の中に戻っていった。
「ま~お~」
花江くんたちが帰ってひとけのなくなった廊下に、間延びした声が響いた。教室のドアから顔だけをにょろりと出した千歳だ。
「せっかく花江くんと友達になるチャンスだったのに、なんで連絡先の交換もしないのよ」
「え、別にそういう展開じゃなかったし」
「そういう展開に持っていくのが大事なんじゃん」