「わたし、あれは蒼ちゃん本人だとずっと思ってました。左手の傷痕があったし、どう見ても同じ顔だった。
でもよく考えたらその人、左利きだったんです。それにやっぱり蒼ちゃんとは性格が違いすぎて……。おばさん、何か心当たりありせんか?」


固い扉をこじ開けるように、一歩詰め寄って答えを求める。

けれど返事はなかった。
代わりにわたしが聞いたのは、隙間風のような、ひゅーひゅーと鳴る細い音で。

それが目の前の体から発せられていると気づいたのは、おばさんが顔を歪めながら、床に崩れ落ちたあとだった。



* * *