すごい。初対面の挨拶から10分足らずでここまで距離を縮めるなんて、わたしには考えられないことだ。すごいなあ、千歳は。

……でも、できればわたしも輪の中に入れてほしいな。

ふと浮かんだそんな気持ちを、すぐに麦茶と一緒に飲みこんだ。

わたしは千歳のように、人とすぐ打ち解けられるタイプじゃない。

友達はそれなりにいるし、明るい性格だと言われるけど、本当はまわりに合わせて笑顔を振りまいているだけ。

だから今みたいに、3人でいるときに自分以外のふたりが楽しそうにしていたら、とたんに立ち位置を見失ってしまう。

わたしが入ることでふたりの空気をジャマしてしまうんじゃないか、そう思ってしまうのだ。


花江くんたちの会話の妨げにならないよう、グラスの底に映った照明の灯りをぼんやりと見つめていると、


「真緒」

「……えっ」

「って、呼べばいい? 茅野さんのことは」


花江くんがわたしの顔をのぞきこんで言った。