「それと、もうひとつ。
……あのとき真緒を助けてウミホタルを見せてあげたのは、俺じゃない」


潮風がふわりと、やさしく髪を揺らした。


「ホタルだよ」


一筋の涙が、つうっとわたしの頬を流れた。



……ああ、もう。完敗だ、ホタル。

最後に大切な人を守れてよかったと、あなたは言っていたけれど。

全然、そんなことないじゃん。
だって最初からずっとわたしは守られていたんだから。


ホタルの、あのやさしい左手に――。