ぐちゃぐちゃに絡まった感情の末の、不条理ともいえる行動が、同じ女であるわたしには少しだけ理解できた。
「あなたは、萩尾さんを密かに愛していた。だから水原香澄さんのことを――」
突然、横っ面を引っ叩かれた。
勢いよく傾いた体が岩の地面に叩きつけられる。とっさに顔をかばった腕の皮膚に、焼けるような痛みが走った。
「それ以上よけいなこと言ったら殺すわよ!」
「お前!」
ホタルが福田のぶえにつかみかかった。
「ダメ!」
わたしは這いつくばったまま、ホタルの腰を後ろからつかんで制止した。
「殴っちゃダメ、お願い、ホタル……!」
お願いだから、もう人を傷つけないで。
自分の心を傷つけないで。
ホタルの心は人を攻撃したいなんて望んでいない。
それでも攻撃してしまうのは、自分のためじゃなく周囲を守るためだ。
本当はとても優しくて、誰よりも繊細で。
だからもうこれ以上、その左手に悲しいことをさせないで――。