「蒼、真緒ちゃん、こっち!」


40分ほど快速電車に揺られて下車すると、駅前のロータリーで凪さんが待ってくれていた。
レンタカーの窓を開けて、大きな仕草で車内から手招きをしている。

わたしたちは駆け足で後部座席に乗り込んだ。


「待たせてごめん、凪兄ちゃん」

「いや、俺も今着いたとこ。無事に合流できてよかったよ」

「友達が協力してくれたおかげで電車に間に合ったんだ」


大和と千歳のことをさらりと“友達”と呼ぶ蒼ちゃんに、わたしは密かに嬉しくなった。

さっきボートを降りるとき、大和が蒼ちゃんに言ったのだ。また一緒に射的しような、と。

それは蒼ちゃんに向けた言葉でもあり、ある意味、ホタルに向けた言葉でもある。

ホタルは、聞いていただろうか。どんな気持ちで大和の言葉を――友達の言葉を受け取っただろうか。


「じゃ、さっそく出発するよ」

「はい」


凪さんの言葉にわたしはうなずき、まっすぐ前を見た。