「……っ」


自販機の向こう側に誰かが立っているのだ。思わず漏れそうになった悲鳴を、わたしは寸前で飲みこんだ。

……誰? 誰なの? 
もしかして、おじいちゃんの知り合い? 

じゃり、と地面の砂を踏む音が聞こえる。影がだんだん近づいてくる。

もうダメだ、見つかる――!


「真緒」


耳に飛びこんできた声は、聞き馴染みのある声だった。


「え……?」


無意識に固くつむっていた目を、恐る恐る開けて確認する。

そして見たのは、久しぶりに会う友人の顔。


「ち、千歳……なんでここに?」


とたんに膝から力が抜けて、自販機にもたれるように座ってしまった。そんなわたしに千歳が手を差し出した。


「説明はあと。早く立って。おじいさんたちに見つからないように駅まで行かなくちゃいけないんでしょ?」