4台並んだ自販機の裏に逃げこむと、蒼ちゃんが息を整えながら額の汗を腕でぬぐった。


「思ってた以上の包囲網だな」


このあたりはわたしの地元だ。蒼ちゃんの言う通り、包囲網が張り巡らされていると言っても過言じゃないのかもしれない。


「ごめん、わたしのせいで……。もしまた誰かに見つかったときは、わたしが捕まっても蒼ちゃんだけは逃げて」

「わかった」


蒼ちゃんがきっぱりと答え、それからふっと柔和な笑みを浮かべた。


「でも、そうならないように慎重にいこう。とりあえず他に駅まで行けるルートはある?」


わたしは数秒考え、首を横に振った。


「正直、かなり厳しいと思う。海沿いの道は最短ルートだけど人目につくし、山側は時間がかかりすぎるから」


どうしよう。こんなことをしている間にも電車の時刻が迫ってくる。

凪さんとの合流に遅れたら、せっかくのチャンスがつぶれてしまう――。


「しっ」


そのとき、蒼ちゃんが人差し指を立てて声をひそめる合図をした。

目配せされた方向を見ると、人影がひとつ、くっきりと地面に落ちていた。