「……蒼ちゃん」

「ん?」

「ごめんね」

「何が?」

「わたし、蒼ちゃんを大切に想うのと同じくらい、ホタルのことも大切なんだ。ふたりとも幸せになってほしいの。
だから……やっぱり選べなかった。ごめん」


以前、蒼ちゃんは『俺を選んでほしい』と言った。

ひとつの体にふたつの人格。
蒼ちゃんが幸せになるには、ホタルが消えなくちゃいけなくて。
ホタルが幸せになるには、蒼ちゃんが犠牲を強いられて。

そんな状況の中で、自分を選んでほしいと言ったのだ。


「え、ちょっと待って、真緒。もしかして俺の言ったこと、そういう意味にとらえてた?」

「え、うん。あれ? 違うの?」

「いや、違わないけど。でも正直、別の意味もあるっていうか……」


わたしは意味がわからず、目を白黒させた。蒼ちゃんは「まいったな」と独り言のようにぼやきながら頭を掻いている。

どうしたんだろう。“選んで”の意味が、他にあるっていうこと?