笑い飛ばそうと思った。だけど、できなかった。
僕は黙りこみ、しばらくしてから唇をようやく開く。
「……3人?」
「ああ。俺と、蒼と、ホタルの3人で食べてほしいって」
何を、バカなことを。あの女は、本当に……。
「ホタル。たしかにお前が生まれてきた理由は、絶望を背負うためだったのかもしれない。でも、そうやって生まれた世界でお前は何に出逢った? 本当に大事なのは、そっちじゃないのか?」
凪の言葉がだんだん遠くなっていく。
意識がまた、深い海へと沈んでいく。
「お前は真緒ちゃんと出逢ったことを後悔してるんだよな。
でもな、あえて言わせてくれ。今のお前はもう、復讐のためだけの存在じゃないよ。だって、このハンバーグの味を知ってるだろ」
「凪」
ちゃんと声を出せたか自分でもわからなかった。頭が朦朧として、唇すらまともに動かせない。
ゆらゆらと漂う意識をどうにか繋ぎ止め、消えかけの声で僕は言った。
「お前に、調べてほしいことがあるんだ――…」
* * *