「まあ、作ったところでプレゼントするわけにもいかないんだけど」


所詮はただの自己満足だ。わたしは自嘲的にひとりごちて、ブレスレットをポーチに入れた。そしてそのまましばらく、ぼんやりと景色を眺めていた。

夕映えが、波ひとつない海を茜色に染めあげていく。

桟橋に座りこんだわたしも、この光景の一部のように同じ色になっているのだろうか。


「きれいだなあ……」


以前は空なんか見ても何とも感じなかったのに、最近はいろんなものを目に焼きつけたいと思うようになった。

太陽も、月も、山も、海も。ありふれた景色の美しさに気づいたのは、この世界を、ホタルと一緒に見ていたいと思ったからだ。


いつからわたしはこんな気持ちを抱くようになったんだろう。

最初はあんなやつ大嫌いだった。親探しに協力することにしたのも、早くホタルに蒼ちゃんの中から消えてほしかったからだ。

いつも憎まれ口のたたき合いで。時にぶつかって、仲直りして。

強さの裏に隠した弱さや、途方もなく深いホタルの傷を知っていくたびに、いつしかわたしは彼に寄り添いたいと思うようになっていった。