こないだの夏祭りから、ふたりは付き合い始めたらしい。

一学期の頃は蒼ちゃんに恋心を抱いていた千歳。だけどホタルによる“お年玉事件”があり、あのときから千歳も、蒼ちゃんが何かを抱えていることは察していたと思う。

どんな心境の変化を経て、蒼ちゃんをあきらめたのかは知らないけれど、千歳に新しい恋が訪れてよかった。

そしてその相手が、ずっと一途に千歳を想ってくれていた大和で本当によかった。


「そうだ。お前ら、バイトが終わったらクルージングに連れてってやるよ」

「クルージング?」


突拍子もないことを言い出した大和に、わたしたちは首をかしげた。すると大和はムフフフと鼻の奥で笑い、スマホに保存してある写真を見せてくる。


「これだよ、これ」

「……やまとまる?」


沖釣りで使うような小さなボートに、ペンキで器用に描いた“大和丸”というロゴ風の文字。

たしか大和の家は漁師で、何種類もの船を持っていると聞いたことがあるけれど。