3日間ろくに熟睡できなかったせいで、目の下にクマができている。頭の中は、何の道筋も立てられずに散らかったままだ。
このまま自分の部屋で悶々と過ごしていたら、体も頭も腐ってしまうかもしれない。
本気でそんな気がしていたから、突然の千歳からの誘いは有難かった。
「お待たせしました。マンゴーとブルーハワイです」
プラスチック容器にうず高く盛ったかき氷を差し出すと、強烈な陽射しが氷の上で反射した。
それを受け取った若い男性が、パラソルの下で待つ彼女のもとへと戻って行く。
水着姿の若者や、家族連れで賑わう海水浴場。
今日、わたしは、千歳の知人が営む海の家のバイトに来ている。
お盆前の日曜日で人手が足りないから手伝ってほしい、と頼まれたのだ。
「真緒、お疲れさま~。今のうちにちょっとだけ休も」
客足が途絶えたタイミングで、千歳が声をかけてきた。
「うん」
扇風機の近くの椅子に座ったわたしは、千歳からラムネジュースを受け取って一息ついた。