『ホタルの目的は復讐だ』

『俺は、ホタルを統合する』

『人を傷つける左手は、もういらない』


さっきの蒼ちゃんのセリフが頭の中をくり返し流れている。それ以外の思考は凍りついたように、何も考えられなかった。


「真緒」


蒼ちゃんがわたしの体を向き直らせた。至近距離で見つめてくる強い瞳に、胸が苦しくなる。


「俺、真緒のこと――」

「ごめん……っ」


わたしは腕を振りほどき、逃げるようにその場を走り去った。



   * * *



それから3日後。蒼ちゃんちのおばさんが無事に退院した。

だけどわたしは電話でお祝いを伝えただけで、直接顔を出すことはしなかった。

理由は明確だ。蒼ちゃんに会う勇気がなかったから。

そして、蒼ちゃんの中から見ているだろうホタルに、今のわたしの無様な顔を晒したくなかったから。


『俺、真緒のこと――』


途中で逃げてきてしまったけれど、蒼ちゃんは何を言おうとしていたんだろう。