そんなこちらの意図を呼んだかのように、田尻さんの方から切り出してくれた。


「それで、聞きたいのは生前の水原さんのことね?」

「はい」


わたしとホタルが頷くと、承知したように目を細めた田尻さんが、ゆっくりと語り始めた。


「彼女とは高校2年生のとき同じクラスだったの。でも学校での交流はほとんどなくて、卒業後に同じ洋菓子店で働いたのも本当にたまたま。
わたしは当時学生のアルバイトで、彼女はフルタイムでね、同じ年頃の女の子も何人かいたけど、彼女はひとり黙々と作業するタイプだったわ」

「一緒に働いた期間はどのくらいですか?」

「わたしが大学3年のときに彼女がやめたから……たぶん2年半くらい」

「あの、お店をやめた理由ってもしかして」


横からわたしが口をはさんだ。田尻さんがうなずいて答える。


「そう、水原さんが妊娠したから」


つまりその時点で、蒼ちゃんの父親と付き合っていたのだ。

思わず前のめりになったわたしを手で制し、ホタルが冷静な声で本題に切り込んだ。


「相手の男性について、母は何か話していましたか? 年齢とか出身校とか」