「誰がまぬけ面よっ。ていうか、どうして蒼ちゃんが知ってるのか不思議に思うのは当たり前じゃん」
「僕が教えたんだ。お前を巻きこんでる案件について全部教えろって、蒼がしつこかったからな」
わたしのクエスチョンマークは、ここでさらに大きくなった。
ホタルが教えた?
蒼ちゃんがしつこく訊いてきたから?
それってつまり、ふたりが会話をしたということ、だよね?
「じゃあもしかして、蒼ちゃんは今……」
「ああ、起きてる。外のことも見えてるはずだ」
「………」
今までの蒼ちゃんは、ホタルの存在に気づかないふりで無視をしていた。
だからふたりの間で会話はなかったし、人格の交代時には逃げるように眠っていたんだ。
それが、変化したということは――
「現実に向き合おうとしてるんだ……蒼ちゃん」
わたしが確信めいた声を漏らすと、ホタルは興味なさそうに、到着した快速電車に乗り込んでいった。
* * *