嫌な予感が胸をかすめ、わたしは首を横に振る。
あんなの聞き間違いだ。もしくは、いつのも口の悪さが出ただけ。だから真に受ける必要はない、と自分に言い聞かすように思った。
* * *
翌日。待ち合わせ場所の駅で、わたしは目を丸くして固まった。
「え……蒼ちゃん?」
本来なら現れるのはホタルのはず。だけどそこにいたのは、少し申し訳なさそうに眉を下げて微笑む蒼ちゃんだったのだ。
「驚かせてごめん。でも真緒を巻きこんでるのに、俺が逃げるわけにはいかないから」
「う、うん……」
言っていることは理解できる。ただわからないのは、なぜ田尻さんに会いにいくことを蒼ちゃんが知っているのか、ということだ。
それを尋ねる前に、目の前の人物が蒼ちゃんからホタルに代わった。
「お前、まぬけ面にクエスチョンマークが浮かんでるぞ」
6日ぶりのホタルが、相変わらずの憎たらしい調子で言った。
久々だから思わずドキンと胸が鳴ったけれど、バレないように強い口調で言い返す。