「寝ぼけたことを言うなよ、乾。万由子だけならまだしも、よけいなヤツがついているだろ」

「よけいな、ですか?」

「わかるだろ。“あれ”は周りに望まれたわけじゃなく、若気の至りでできた子どもだ。なにしろ万由子が離婚するとき、相手の男はあっさり親権を手放したんだからな。
実の親ですらいらない荷物を、受け入れてくれる物好きがどこにいるんだ」


心臓をナイフで一突きされて、血まみれのところをさらに何度も切りつけられる。そんな感覚だった。


“周りに望まれたわけじゃない”

“実の親ですらいらない荷物”


……そんなの、言われなくてもわかっている。わたしだって自分の立場が理解できないほどガキじゃない。

ちゃんとわかっているから、なるべく自分の存在を小さくして、まわりに負荷をかけないよう気を遣いながら生きているんじゃないか。