罪悪感に似たものがわたしの胸中を漂っていた。
蒼ちゃんを守るためとはいえ、秘密を知りながらもずっと黙っていたことに。
そして何よりも、わたしの中でホタルの存在が大きくなってしまったことに。
「ホタルはね」
ふいに蒼ちゃんが言った。
「水が嫌いなんだ。特に、海が」
「………」
「なあ、真緒」
蒼ちゃんが体を前に向けたまま、視線だけ隣のわたしに向けた。
「どうして、消えたはずのホタルが蘇ったと思う?」
それは質問ではなく、こちらの反応をただ見ているような口調で。
わたしはもちろん答えることができず、わずかに首を横に振ると、蒼ちゃんは静かにこう言った。
「俺が蘇らせたんだ」
ブレスレットを着けた右手で、そっと左手の傷痕をなでる。
そうして彼は目を伏せて、感情が抜け落ちたような、抑揚のない声で語り始めた。
* * *