毛穴という毛穴から一気に汗が噴き出してくる。
おそらくホタルはおんぶを今初めて知ったから、この行為に抵抗がないんだろう。
けど、わたしの方はそうもいかない。子どもじゃあるまいし人におぶってもらうなんて。
しかも相手がホタルだなんて……。
「い、いいよ、自分で歩けるから」
「バカか、お前。ちょっとは僕の身にもなれ」
“僕の身”の意味がわからず次の言葉を待つと、ホタルはぶすっとした横顔で言った。
「お前が無理してあとで動けなくなったら、こっちはよけいに大変なんだよ」
「………」
突き放すような口調。だけどその冷たさの奥にある、確かな温もりに気づいて、わたしは胸が熱くなる。
だってホタル。それって全然、突き放してないじゃん。
そんなきつい言い方をしているけど、つまりわたしが動けなくなっても、あんたは見捨てて行かないっていう前提の言葉でしょう?
家族からも“いらない荷物”扱いされた、こんなわたしを……。
「ホタ……」
「わかったらさっさと乗れ!」
「は、はいっ」