どうやら完全に挫いたみたいだ。わたしは肩をすくめ、顔の前で片手を立てた。


「ごめん、先に行っといて」


立ち止まったわたしたちの横を、ぞろぞろと人が通り過ぎていく。まもなく始まる花火への期待のせいか、みんな心なしか早足だ。

この通路を抜ければ広い波止場に出るから、そこで花火を見る人が多いのだろう。


「お前は?」

「ちょっと遅れて行くよ」


なるべく痛みを悟られないよう、わたしは気丈に笑って答えた。

するとホタルは怒ったように唇を曲げ、しばらく視線を周囲に泳がせた。

その目がふと一点で止まり、観察するように凝視している。

ホタルが見ていたのは、小さな女の子をおんぶして歩くお父さんだった。


「えっ……」


突然のことにわたしは面食らった。踵を返したホタルが中腰になり、後ろ向きに両手を広げたのだ。

その体勢の意味を理解するより先に、命令が飛んできた。


「さっさと乗れ」


の、乗れって!? まさか、おんぶ!?